人は話を聞けない、上手く伝えられない
私たちは日常の会話の中で、相手が本当に伝えたいことをどれくらい理解できているでしょうか。そして、自分自身が本当に共有したい思いを、どれほど言葉にできているでしょうか。
多くの人は、相手が話した「単語」を捉え、その単語の意味だけで会話を理解しようとします。しかし、話す側が本当に届けたいのは、単語の裏にある「共有したい思い」です。
私たちの多くは「分かり合えて当然」という前提を持っています。だからこそ、「言った言葉だけで全て伝わるはず」「聞いた単語だけで全て理解できた」と錯覚してしまいます。
その結果、「どうして話を聞いてくれないんだろう」「なぜ上手く話せないんだろう」という不完全燃焼な感情だけが残ってしまうことになります。
共有したいことを共有出来ない脳の仕組み
過去の記事でもご紹介したように、会話の論点は基本的にズレていくものです。
話の中で出てきた単語や出来事に脳が反応し、「そういえば…」といつの間にか別の話へ脱線してしまうのが私たちの日常です。
さらに「認識構造」という観点から見ても、脳には以下のような壁が存在しています。
- 同じ世界を見ることはできない
- 共有できているのは「単語」だけであり、その「対象(意味合い)」までは共有できない
- 誰もが自分の「記憶のデータ」を通して相手を理解しようとする
- 分かり合えないことに対してネガティブなイメージを持っている
このように、私たちが「本当に共有したいこと」をしっかりと分かち合える状況を作るのは、脳の構造上極めて困難なのが現状です。
つまり、私たち人間は「共有できなくて当たり前」の状態で生きているのです。

何を共有したいの? 問いの重要性
共有が困難だからといって、人間関係を簡単に諦めることはできません。
「伝わらなくても、伝えたいことがある」のが私たち人間だからです。
このもどかしさを突破するために欠かせないのが、「私は何を共有したいのか」という自分との対話です。
- 相手へのアプローチ: 一度で伝わらなくても、粘り強く言葉を変えて伝えることで、相手にも「聞く姿勢」が生まれます。
- 自分へのアプローチ: 自分自身に「何を共有したいのか」を問い続けることで、本当に伝えたい核心が見えてきます。
自分自身に問いを投げかけ続ける姿勢こそが、伝わらない現状を変える大きな力になります。
共有したいことは何? と聞き合える関係性

共有の難しさを理解し、自分に問いを持つ大切さをお伝えしてきましたが、一人でそれを行い続けるのはやはり限界がありますよね。日本の暗記中心の教育の中では、そうした対話の基礎を学ぶ機会が少ないのが現状です。
だからこそ提案したいのが、パートナーや家族、同僚とお互いに「共有したいことは何?」と聞き合える関係性をつくることです。
- 家庭(親子)で取り入れると:
自ら考える力、対話する力、そして相手の話をじっくり聞く力が育まれます。 - 職場で取り入れると:
無駄なすれ違いが減り、業務の効率化だけでなく、チームの雰囲気も格段によくなります。
感情的になって喧嘩しそうなときや、どうしても意見が噛み合わないとき。「あなたが(私が)一番共有したいことって何だろう?」と問いかけ合える関係には、ふっと一息つける「心のゆとり」が生まれます。
「言った・言わない」「分かってくれない」を乗り越えて深く疎通し合えた経験は、これからの人生において何より大きな財産になるはずです。
まとめ
「分かり合えない前提」を受け入れた上で、「それでも共有したいものは何か?」をお互いに問いかけ合うこと。
この小さな習慣が、家庭や職場でのすれ違いを減らし、心の通い合う温かい関係性を築く大きな一歩になります。
日常の小さな会話から、ぜひ「一番共有したいことは何?」という問いを取り入れてみてください。

